ノーベル文学賞の発表が選考組織のスキャンダルで見送られたことを受けて、スウェーデンの文化人などがことし1年限定で創設した新たな文学賞で最終選考の4人に残っていた村上春樹さんが、執筆活動に専念したいとして辞退を申し出ていたことがわかりました。
村上さんは、最終候補に選ばれたことに感謝の思いを示しながらも、執筆活動に専念したいとして辞退する意向
受賞したわけでもなく。最終候補になったから辞退というのもあれだけど。
やっぱり村上春樹はノーベル文学賞が欲しくて堪らんのだね。仮のかりそめの臨時文学賞など欲しく無いんだね。だって芥川賞二回落とされて、日本を見切ったわけで。
『1Q84』でも日本の文学賞を嘲笑ったし、NHKの受信料や新興宗教そしてカルトコミューンを批判的に表現した。
でも折角「1984」にあやかったのなら、オーエルが洞察した二重思考の問題も書いて欲しかった。その後の『騎士団長殺し』で二重メタファーの危険を語ったわけだけど。
確かに小説を書き上げるにはあらゆる制限を課さなければならない。まさに寝ても覚めても。どころか夢の中でも書き続けるくらいでないといけない。それを執筆活動に専念したいという創造的主体の真っ当な事由なんだよ。
代筆やブックライターの如き売文業者を使わずせっせと自作を書き上げるにはいちいちの組織の介在など不可能だ。
物理的にも精神的にも物質的にも自由であること。文豪内田百閒が実践した自由人の極意は『阿房列車』で明らかだけど、自己の堕落からも自由でなければ他者介在から知的に距離をおくことなど不可能だ。
文学ほど賞が多い芸術分野も無い。それほど利用に適しているんだね。賞ばかりもらってもあれだけど、みな文学者は受賞したい。
でも春樹は辞退した。その理由が「執筆活動に専念したい」から。「嫌だから嫌だ」よりかなり格好いい。