マコガレイ。マグロ。磯粒貝。お造り。夏の記憶。
「猫もしゃくしも」作家の猫じゃらし。最近、川端康成賞を受賞した保坂和志は単に猫が好きというより自作小説において猫はかなり重要なファクターであるらしい。
テレビで作家の仕事場を見るのは愉しい。ネットライティングで流行った「ノマド」も所詮は通過点でしかなくて、気軽に安逸なお気軽では済まない創作の日々。創作空間の流動性は真に生産性に貢献しない。
文芸において受賞が意味する商業性とも違う報償の意味は不明だ。でも小説家保坂和志は外猫「シロちゃん」に無償の愛を注ぐ。寺の坊さんがお経を唱えるように、もくもくと粛々と猫の世話をする。
猫はやって来る。餌が欲しいだけでもない。こうやって休憩したり縄張りを防衛する。
猫の前で人間はもっと自然に自由であるべき。もっと自らの常識から自己を解放すべきだ。
「保坂さん、あなたにとって猫はなんですか?」
「世界と自分をつなぐ入口」
作家と世界。猫と世界。人間本意の思考をまずはリセットすること。
人間が自由を獲得する瞬間に多分、猫は立ち会ってくれる。
木にだって上る。猫は緊急事態でもある。