カレーたまごの日記

小説やノベル、文芸について書きます。

作家は送られて来る本なんか読まないの?

 

2017.7.24

ある作家の公式ホームページの掲示板に、先生に自分の小説を送りました。是非感想を、という趣旨の書き込みがあって、その作家は、このような小説は読まない。すまない、と書いた。管理人は「後の祭り(笑)」と書いた。

多分、いちいち作家が自分に送りつけられてくる素人の習作を熟読してアドバイスなり作家デビューの橋渡しなどするわけにもいかず、まして漫画のように出版社は持ち込んで来た漫画を読んでくれてジャッジしてくれるということもない。小説の持ち込みはどこの出版社も当然ながら作家も対応はない。だからか小説投稿サイトや文学フリマが流行るのだろうか。

後日、その掲示板に、断っておくが自作小説を私に送っても読まないし感想もない。あしからず、こんな感じにその作家は書いた。HP管理人も、困ったもんだな。そんなやつに限って「先生」とか書いてよこす。お前も生徒なんかじゃない、云々、そんな感じに、また書いた。

この作家は自分が書いた「小説入門書」を読んでくれた読者が自作小説を送って来た事の意味を間違えたように思う。何を間違えたか。何を見くびったか。何を侮ったか。それは有象無象の読者の中から小説の書き手になるための「手引き」を現役小説家として書いた筈の著書の影響力である。そもそもの発端はこの作家の書いた素晴らしい著作にあるのだ。

はっきり言えばいい。面倒くさいんだ。そんな小説を読む時間はこの俺にはない、とね。これは小説論でも文学論でもない。サービス精神のないシェフのいるレストランの話だ。そのレストランの常連はそのシェフのぼやきにうなずくかも知れない。馬鹿な客がいるもんだ。シェフの料理はまるで分ってない、云々。レストランがつぶれない事だけ考えて自分の商売に励めばいい。

でも私も何回も読み返す「書きあぐねている人のための小説入門」のあとがきにはこうある。

「最後に、これを読んでどうしてもわからないところがあったら、編集部まで手紙を下さい。答えを書きます。しかし、この本に書かれた内容は、読んで理解するではなく。書くという行為を通じてわかるようになっているので、質問するよりまず、書いたり、時間をかけて考えたりしてください。 2003.9 保坂和志