村上春樹「ノルウェイの森」を楽しく読んでいく。写実的な恋愛100%小説という本作は爆発的に売れた。最も商業的に成功した小説だ。上巻赤色下巻緑色の87年のクリスマス贈呈にも相当なった。一人で何冊も買って贈る。今の電子ブックは工芸品としての書籍的側面がない。一人一冊。まるで血盟団事件の「一人一殺」じゃぁないか。
そういえば昭和初期にはテロルが横行した。軍部内部からのクーデター未遂も頻繁だった。財閥と軍閥が天皇を蔑ろにしたという憤激。その赤誠の忠誠心に着火した事例もある。
若干作者の経験も小説に描かれているようだ。春樹は和敬寮に入った。前川さんという文科省事務次官を勤めた喜平さんの親父さんだから祖父が匿名で寄付設立した学生寮だった。B型一人っ子の春樹が寮生活に馴染めないのも当然だろう。作中の東大法学部の先輩永沢と連んでいろんなことをやる。学生時代のいろいろは交友にあるあけだが。写実的というのが面白くて私小説ではないというわけで。小説家は絶対に自分の青春から逃れることはできない。小説に絶対反映される。
今読み返しても名作だね。面白い。再読会がますます楽しい。直子の手紙。今、ワタナベくんは京都にやって来たばかりだ。