カレーたまごの日記

小説やノベル、文芸について書きます。

小説『シンセミア』楽しかった。悲しい物語だった。

 自分の生まれ育った場所の歴史とその後の展望を小説に取り込んで再構築してみたい。そんな思いからこの小説『シンセミア』は誕生したらしい。作者阿部和重は思ったらしいけど。どうしてもノスタルジーをフィクションワールドへ取り込もうとすれば、知的距離を措いたつもりが嗜虐と諧謔そして加虐が加味されて、魑魅魍魎の世界となってしまうのかな。そして何より悲しい物語だ。主要な登場人物はほぼ殺される。

 小説の新たな試み。物語と比喩、ストーリーとメタファー。自分の記憶を基に自分が書く私小説の狭い視界を越えて町の記憶を外部から覗き込んで書き上げる。神町サーガ。ふむ。『ピストルズ』へと読み進めるわけだけど。

 

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