カレーたまごの日記

小説やノベル、文芸について書きます。

ハンナ.アレント「責任と判断」を読んだ。

 

ハンナ.アレント「責任と判断」を読んだ。少し前、映画「ハンナ.アレント」が話題になった。最近、NHKでも彼女について連続放映された。

 

社会学者の宮台真司がよく引用する哲学者であった。「悪の凡庸さ」。

 

本書はアレントの遺稿責任者が彼女の論考や講演した内容を集めた論文集である。

有名な「アイヒマン裁判」の問題点を彼女は挙げた。被告は、自分は命令されただけ、自分は歯車だったに過ぎない、と弁明した。小役人の木っ端役人だから「小さな悪」に過ぎない..。自分は無罪だ..。

 

「悪の凡庸さ」については、アレントソクラテスの道徳を持ち出し、ソクラテスが死刑を宣告されても..「悪法もまた法なり」..自分の道徳に殉じて、死刑に甘んじた..。決して逃亡して自らを偽り自らを敵に回してまで..偽り生きるよりは、死を選んだソクラテス..。誰しもできる生き方ではないけれど..。


日本にナチの社会が到来すると、我らが安倍総理の政治的手法.その政治的理想に文句のある人々は言うけれど..。

 

総体的なナリズムの研究..全体主義と一般大衆、時代の空気..。先鋭的なカリスマ待望の共同体の出現、差別主義の扇情、社会悪の歪曲。対抗勢力に非寛容。敵対意識の過剰性。内憂外患は政治の常なれど..。一方で盟主へ過剰なまでの忖度と迎合..。イバンカ歓迎、57億円プレゼント。トランプ来日..。ミサイル迎撃購入 OK ?

 

70年前は全体主義国家だったこの国、日本の問題もアレントの主張に沿って考えれば明瞭な問題性が浮かび上がる。
 
思考をやめた人々が如何に定言命法通り(アイヒマンのように)悪を遂行して行くか。あらゆる人間に関わる問題である。

 

東條英機東京裁判で弁明した論法もまさに同じである。しかし、ヒトラーと同列のこの戦争指導者..自分は天皇陛下の役人に過ぎぬ云々..。あの戦局では回避不可能..と軍部暴走に自分は無力だと弁明した。参謀総長でもあった東條のこの弁明..。誰も責任などないかのように..。

 

だから「一億火の玉」「一億総自決」「一億総懺悔」

 

政治学丸山真男の言う「無責任の体系」..なのかな。